日本神話に登場する木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)は、日本の木の花(コノハナ)を代表するサクラ(桜)の美しさを象徴している女神といわれています。
その可憐な姿は、古来より人々を魅了し、日本の春を彩る桜の花と重ねて語られてきました。この記事では、日本の象徴とも言える桜の品種や、その花言葉と共に、木花咲耶姫が象徴する美しさの世界へご案内します。
桜は日本の国花?
桜は、古事記や万葉集にも登場するほど、古くから日本人に愛されてきた花です。春の訪れを告げる象徴として、日本人にとって特別な存在と言えるでしょう。しかし、「桜は日本の国花」というイメージが強い一方で、実は、日本には国花と定められた花はありません。
サクラが愛される理由
なぜ、桜が国花ではないのに、これほどまでに日本人に親しまれているのでしょうか。それは、桜が単なる花ではなく、日本人の心に深く根ざした文化や歴史を象徴しているからです。
- 式典や行事: 桜は、入学式や卒業式など、人生の節目となる様々な行事で飾られます。
- 貨幣のデザイン: 一円玉の裏側には桜の花がデザインされており、私たちの身近なところに存在しています。
- お花見文化: 春になると、多くの人々が桜の花の下に集まり、お花見を楽しむという文化が根付いています。
多様なサクラの種類
桜は、日本人の生活に深く関わってきただけでなく、その種類も豊富です。日本には、固有種を含めて10種の基本の野生種があり、それらを基に100種以上の自生種が生まれました。さらに、園芸品種は200種以上、名前が付けられている品種は800種類とも言われています。
主な桜の種類
ソメイヨシノ
日本を代表する桜の品種。学名: Cerasus × yedoensis ‘Somei-yoshino’
桜といえば、多くの人がまず思い浮かべるのがソメイヨシノ(染井吉野)でしょう。日本を代表する桜の一つであり、その開花を待ちわびる人は多く、春の訪れを象徴する存在です。
- 特徴: 一重咲きで、花の色は白色がかった淡紅色。開花時期は早咲きで、葉が出る前に花が咲くのが特徴です。
- 魅力: ソメイヨシノは、桜並木などに見事な景観を作り出すため、お花見の名所として多くの人々に親しまれています。
そのソメイヨシノは、江戸末期~明治初期に当時の染井村の植木職人が、オオシマザクラ(Cerasus speciosa)とエドヒガン(Cerasus itosakura)を交配させてつくったとされています。
もとは「ヨシノザクラ」という名前でしたが、吉野のヤマザクラと混同しやすいということで、1872年に博物学者の藤野寄命(ふじの よりなが)が名付けたといわれています。
花の美しさや華やかさから、明治以降は他のサクラを圧倒する人気の品種となりました。桜並木、河川敷、学校、公園など多く植栽されています。
日本各地には、ソメイヨシノのある名所がたくさんありますね。花弁は5弁で花が咲いてから葉が出るのが特徴です。
3月下旬ごろから開花。花言葉は「純潔」「優れた美人」。
ヤマザクラ
学名: Cerasus jamasakura
花は中輪で直径は2.5~3.5cm 、花弁は5枚の一重咲きで、色は白色から淡紅色と樹種によって花色に濃淡があります。
花が葉より先に咲くソメイヨシノと違い、ヤマザクラは多くの場合、葉芽と花が同時に展開します。
日本の野生サクラの代表種であるヤマザクラは、古くから和歌に詠まれ親しまれてきました。
春にヤマザクラが咲き誇ることでよく知られる奈良県の吉野山は、ヤマザクラを中心に約200種3万本の桜が密集しているといわれています。
3月下旬から4月いっぱい開花します。花言葉は「純潔」「高尚」。
カンザン
学名:Cerasus Sato-zakura Group ‘Sekiyama’ Koidz.
オオシマザクラを基に江戸時代に誕生したサトザクラの一種とされています。
カンザンは濃い紅色をしているのが特徴ですが、意外にも白い花びらのオオシマザクラの特質を継承していると考えられています。
一般的にオオシマザクラの花弁は白いのですが、アントシアニンの影響で花弁がわずかに紅色に染まる個体があり、散り際の低温刺激によっても色が濃くなることがあるそうです。突然変異が起こって紅色の個体が生まれ、ここからカンザンが誕生したと考えられています。
八重咲きで濃い紅色の花弁が20枚から50枚あり、5㎝を超える大輪の花を咲かせることも。
ドイツのボン市内にはカンザンが300本植えられた桜並木があり、開花時には桜祭りが開催される人気観光スポットになっています。
東京での開花は4月下旬。散るのが遅く長く楽しめるます。
また、花を塩や白梅酢で漬けた桜漬けの多くはカンザンが用いられています。花言葉は「しとやか」「豊かな教養」。
まとめ
木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)が象徴する美しい桜は、古くから日本人の心に深く根付いています。桜は国花として正式に定められていないものの、その存在感と愛され方はまさに国花にふさわしいといえます。
桜には多くの種類があり、それぞれが独自の美しさと特性を持っています。ソメイヨシノは全国各地で見られる桜の代名詞となり、春の風景を華やかに彩ります。ヤマザクラはその歴史の深さと共に、日本の自然の美しさを象徴しています。カンザンはその濃い紅色の花びらが多くの人々を魅了し、特に海外でもその美しさが称賛されています。
桜の花言葉にある「純潔」「優れた美人」「しとやか」などの意味も、私たちの生活に彩りを与えてくれます。桜の美しさを感じながら、その儚さや季節の移ろいを楽しむことで、より豊かな日常を送ることができるのではないでしょうか。
桜の季節には、花見を楽しみ春の訪れを実感することで、自然とのつながりを感じられますね。桜を愛でることで、日本の伝統や自然の美しさを再発見し、心豊かなひとときを過ごしてみませんか?