ゼラニウムは、その美しい花と豊かな香りで世界中の人々に愛され続けている植物です。園芸愛好家には観賞植物として、アロマテラピー愛好家には精油として、そしてコスメ愛好家には化粧品成分として、多方面で注目を集めています。
しかし、一口に「ゼラニウム」といっても、実は植物学的には「ペラルゴニウム属」に分類され、ローズゼラニウム、アイビーゼラニウム、センテッドゼラニウムなど、様々な種類が存在することをご存知でしょうか?
この記事では、ゼラニウムの基本情報から種類別の特徴、精油としての活用法、化粧品成分としての働き、そして花言葉や名前の由来まで、ゼラニウムに関するあらゆる情報を網羅的に解説します。
ガーデニング初心者の方からアロマテラピーの専門家まで、ゼラニウムの魅力を再発見していただける内容となっています。
ゼラニウムについて
基本情報
- 学名:Pelargonium graveolens(ローズゼラニウムの場合)
- 英名:Rose Geranium, Scented Geranium
- 別名:ニオイテンジクアオイ
- 科・属名:フウロソウ科テンジクアオイ属
- 原産地:南アフリカのケープ地方
ゼラニウムは、フウロソウ科テンジクアオイ(ペラルゴニウム)属に分類される常緑の多年草です。植物学的には「ペラルゴニウム」が正式名称ですが、園芸界では一般的に「ゼラニウム」と呼ばれています。
実は、真の「ゼラニウム属(Geranium)」は別の植物群で、こちらは主に温帯地域に自生する宿根草です。現在園芸で親しまれている「ゼラニウム」の多くは、正確にはペラルゴニウム属の植物なのです。
一般的なゼラニウム(ゾナルゼラニウム)

Pelargonium × hortorum 花期が長く、赤・桃・橙・白などの花色が楽しめます。葉には広がる環状の紋がある品種もあります。最も広く栽培されている園芸品種です。
アイビーゼラニウム
Pelargonium peltatum アイビーに似た葉を持ち、茎が伸びるため、ハンギングバスケットや寄せ植えに適しています。ツタバゼラニウムとも呼ばれます。
センテッドゼラニウム(香りゼラニウム)
Pelargonium graveolens など 葉に芳香がある品種群で、香りの種類はローズ系、レモン系、ミント系、スパイス系など多岐にわたります。ローズゼラニウム、レモンゼラニウム、アップルゼラニウムなどがこの種類に含まれます。
ハイブリッドゼラニウム
ゾナル系とアイビーゼラニウムを交配して生まれた品種で、両方の特徴を併せ持ちます。暑さに強く、一つの花房にたくさんの花が咲くため、華やかでボリューム感のある仕上がりになります。
歴史と文化的背景

ゼラニウムは、17世紀にヨーロッパに導入されて以来、観賞植物として広く栽培されてきました。特に香りゼラニウムは、その芳香成分から香水や化粧品の原料として重要な役割を果たしています。
ヨーロッパの民間伝承では、特に赤いゼラニウムが魔除けの効果があるとされ、家の周りに植えられることがありました。ゼラニウムが人々の生活に深く根ざしていたことを示す興味深い文化的背景です。
ゼラニウム精油について
基本情報と抽出方法
ゼラニウム精油は、主にローズゼラニウム(Pelargonium graveolens)の葉から水蒸気蒸留法によって抽出されます。花からも精油は得られますが、主要な精油源は葉です。
主要な化学成分
ゼラニウム精油の主な成分は以下の通りです。
- シトロネロール(20-35%)
- ゲラニオール(10-25%)
- リナロール(5-10%)
- シトロネリル・ホルメート
- ゲラニル・ホルメート
これらの成分により、ローズに似たフローラルな香りの中に、やや青みがかったハーバルな印象を感じる特徴的な香りが生まれます。
アロマテラピーでの活用
香りの特徴 ゼラニウム精油は、ローズ様の甘いフローラルな香りに、グリーンでハーバルなトーンが加わった複雑な香りを持ちます。
期待される作用 アロマテラピーの分野では、以下のような作用が期待されています。
- 気分への働きかけ リラックス効果やストレス軽減への期待
- スキンケア 抗菌・抗炎症作用による肌への応用
- 虫除け効果 天然の防虫剤としての利用
ブレンドの例
他の精油とのブレンドにも適しており、以下のような組み合わせが人気です。
- ローズ・フランキンセンス スキンケア用ブレンド
- ラベンダー リラクゼーション用ブレンド
- レモン・ペパーミント リフレッシュ用ブレンド
化粧品成分としてのゼラニウム
INCI名と成分表示
化粧品に配合される場合の成分表示は以下の通りです。
- 化粧品成分名: ニオイテンジクアオイ葉油、ニオイテンジクアオイ花油
- INCI名: Pelargonium Graveolens Leaf Oil、Pelargonium Graveolens Flower Oil
ゼラニウム精油は主に葉と花から抽出される植物油で、ローズゼラニウムとも呼ばれます。化粧品では主に香料(マスキング剤・調香剤)として使用されます。
化粧品成分としての特徴
香料としての役割 ローズとシトラスが混合したような上品な香りが特徴で、多くの化粧品で香料として配合されています。
期待される肌への作用
- 抗菌作用 ゲラニオールには抗菌活性があることが研究で示されています
- 抗酸化作用 精油成分には抗酸化作用を持つ成分が含まれています
- 整肌作用 肌を整える補助的な役割が期待されています
主要成分の特徴 ゲラニウム精油の主要成分はシトロネロール(33%)、ゲラニオール(26%)、リナロール(10%)です。これらの成分により特徴的な香りと、期待される肌への作用がもたらされます
ゼラニウムを配合したオーガニックコスメ
nahrin ボディクリーム サンダルウッド
スイスの自然派スキンケアブランド「ナリン」の製品。サンダルウッドを中心に、ゼラニウムとローズマリーが調和した香りのボディクリームです。3種のハーブがバランスよく配合され、心地よい香りとともに肌のケアができます。


FLORIHANA ローズゼラニウム オーガニック 精油
フロリハナのゼラニウム精油は、ローズゼラニウムとゼラニウムブルボンの2種類を展開。ローズゼラニウムはシトロネロールが際立ち、ゲラニオールとの相乗効果でローズのようなフローラルな香りが特徴です。ゼラニウムブルボンは、スパイシーでフローラルな香りが特徴です。


soel LIVING-OIL SKINCARE フレグランス リリームスク
マドンナリリーとローズゼラニウムを組み合わせた、100%天然精油のペンタイプフレグランス。植物由来成分のみで構成され、上品で持続性のある香りが特徴です。

LIVING-OIL フレグランス Lily Musk 10mL (soel-oil.jp)
ゼラニウムの花言葉

基本的な花言葉
ゼラニウムの代表的な花言葉は以下の通りです: 「友情」「信頼」「健康」「喜び」
これらの花言葉は、ゼラニウムの花が群生して咲く様子や、長期間にわたって美しい花を咲かせ続ける特性から生まれたとされています。
色別の花言葉
赤いゼラニウム 「あなたがいて幸せ」「保護」 赤いゼラニウムは愛情や幸福感を表現する花として親しまれています。
ピンクのゼラニウム 「決意」「決心」 優しいピンク色が、静かな決意を表現するとされています。
白いゼラニウム 「清純」「純粋」 白い花特有の清らかさを象徴しています。
黄色いゼラニウム 「予期せぬ出会い」 明るい黄色が新しい出会いや機会を表現するとされています。
英語圏での花言葉
英語圏では「true friendship(真の友情)」「foolishness(愚かさ)」「gentility(上品さ)」などの意味があります。「foolishness」は、美しい見た目に反して独特の香りを持つことから、「gentility」は歴史的にイギリスの上流階級で愛好されたことに由来するとされています。
名前の由来
学名の語源
Pelargoniumの語源は、ギリシア語の「pelargós(コウノトリ)」です。これは種子の形がコウノトリのくちばしに似ていることに由来します。
一方、Geranium(ゼラニウム)は、ギリシア語の「geranos(ツル)」が語源で、こちらも同様に種子の形がツルのくちばしに似ていることから名付けられました。
和名の由来
テンジクアオイ(天竺葵)という和名は、「天竺(異国の)」と「葵(アオイ)」を組み合わせたもので、海外から来た葵に似た植物という意味があります。
まとめ
ゼラニウムは、庭やバルコニーを彩る観賞植物として、また精油やアロマテラピーの素材として、多方面で活用される魅力的な植物です。
種類によって異なる香りや特性を持ち、色によって様々な花言葉を持つゼラニウムは、贈り物としても人気があります。育てやすい品種が多く、長期間花を楽しめるため、ガーデニング初心者にもおすすめの植物です。
その美しい花と豊かな香りで、私たちの生活に彩りと癒しをもたらしてくれる、身近で親しみやすい植物といえるでしょう。