三叉の槍を持つ瞑想の神と、毒を含む花
ヒマラヤの山頂で瞑想する姿、額の第三の眼、首に巻かれた蛇、手に持つ三叉の槍——シヴァ(Shiva)は、ヒンドゥー教の三大神の一柱として、破壊と再生、そして究極の変容を司る神です。
恐ろしくも慈悲深く、苦行者でありながら理想的な夫であり、破壊神でありながら創造の源でもある。このような矛盾を内包するシヴァに捧げられる花もまた、毒と薬、死と再生という二面性を持っています。
ダトゥーラ(朝鮮朝顔)とビルヴァ(ベール)——これらの植物には、宇宙の根源的な真理が込められています。
シヴァとは:破壊と変容の最高神
プロフィール
サンスクリット名: शिव (Śiva)
別名:
- マハーデーヴァ(偉大なる神)
- ナタラージャ(舞踏の王)
- シャンカラ(幸福をもたらす者)
- ルドラ(咆哮する者、嵐の神)
- ボーレーナート(素朴な主)
- ネーラカンタ(青い首の神)
- マハーカーラ(偉大なる時間)
妃:
- パールヴァティー(サティの転生)
- サティ(最初の妃)
- ドゥルガー、カーリー(パールヴァティーの別の姿)
息子: ガネーシャ、カルティケーヤ(スカンダ)
住居: カイラーサ山(ヒマラヤ)
司るもの: 破壊、再生、変容、瞑想、ヨーガ、時間
シヴァの容姿
- 肌の色:白または灰色(灰を塗っている)
- 額の第三の眼:開けば宇宙を破壊する
- 首:青い(毒を飲んだため)
- 髪:長いドレッドヘア、ガンジス川が流れ落ちる
- 頭飾り:三日月
- 首飾り:蛇(ナーガ)、ルドラークシャの数珠
- 持ち物:
- トリシューラ(三叉の槍)
- ダマル(小太鼓)
- 水差し
- 乗り物:ナンディン(聖なる白い牡牛)
- 服装:虎の皮、質素な腰布
- 姿勢:瞑想の姿勢、または踊る姿(ナタラージャ)
シヴァの二つの側面
シヴァは相反する性質を同時に持つ神として知られています。
破壊者と創造者
- 宇宙を破壊するが、それは新しい創造のため
- 終わりは同時に始まり
苦行者と家長
- カイラーサ山で何千年も瞑想する苦行者
- 同時に、パールヴァティーと息子たちと暮らす理想的な家長
恐ろしさと慈悲
- ルドラとして嵐と破壊をもたらす
- シャンカラとして幸福と祝福を与える
物質的貧しさと霊的豊かさ
- 灰を塗り、墓地に住む苦行者
- 宇宙の主、すべてを超越した存在
乳海攪拌の神話:青い首の由来
宇宙を救った犠牲
シヴァの最も有名な神話の一つが、乳海攪拌(サムドラ・マンタン)の物語です。
神々と悪魔(アスラ)たちは、不死の霊薬(アムリタ)を得るために、大蛇ヴァースキを綱として、マンダラ山を攪拌棒として、乳の海を攪拌しました。
この攪拌の過程で、まず最初に現れたのが、猛毒ハーラーハラ(カールクータ毒)でした。この毒は宇宙全体を滅ぼすほどの力を持っていました。
神々も悪魔も恐れおののき、誰も毒に近づけません。宇宙の危機に、シヴァが立ち上がりました。
「私が飲もう」
シヴァは毒を飲み干しました。しかし、毒が宇宙全体を滅ぼす力を持っていたため、飲み込むことも吐き出すこともできません。妃パールヴァティーが素早くシヴァの首を掴み、毒が胃に達するのを防ぎました。
その結果、毒はシヴァの喉に留まり、首が青く染まりました。以来、シヴァは「ネーラカンタ(青い首)」と呼ばれるようになりました。
ダトゥーラの誕生
この時、シヴァの胸から滴り落ちた毒の滴から、ダトゥーラの花が生まれたと言われています。
毒から生まれた花でありながら、同時に薬効も持つダトゥーラは、シヴァの二面性——破壊と癒し——を完璧に体現する植物となったのです。
ダトゥーラ(朝鮮朝顔):毒と薬の花

植物学的情報
学名: Datura metel(インド原産種)、Datura stramonium(ヨーロッパ原産種)
科名: ナス科
原産地: インド、中央アジア
インドでの呼び名: ダトゥーラ(धतूरा / Dhatura)、ダットゥーラ
英名: Devil’s Trumpet(悪魔のトランペット)、Thorn Apple
日本名: 朝鮮朝顔、チョウセンアサガオ
外観と特徴
- 花:大きなラッパ状、5つの先端が尖る
- 色:白、紫、黄色(シヴァには白が好まれる)
- 大きさ: 長さ15〜20センチメートル
- 香り:強く甘い香り(夜に強くなる)
- 葉:大きく波打った緑の葉
- 果実:トゲのある球形(「トゲリンゴ」の由来)
- 開花時期: 夏から秋
- 特徴: すべての部分に毒性がある
ダトゥーラの毒性
含まれる有毒成分
- スコポラミン
- ヒヨスチアミン
- アトロピン
中毒症状
- 幻覚
- 錯乱
- 瞳孔散大
- 口渇
- 頻脈
- 重症の場合は死に至る
重要: ダトゥーラは観賞用・供養用であり、絶対に食べたり、煎じて飲んだりしてはいけません。
ダトゥーラの薬効(伝統医学)
毒性がある一方で、アーユルヴェーダでは厳密に管理された条件下で薬としても使われてきました。
- 喘息の治療
- 痙攣の緩和
- 鎮痛剤
- 麻酔薬
注意: 現代では危険性が高いため、素人が薬として使用することは絶対に避けるべきです。
なぜダトゥーラがシヴァに捧げられるのか

1. 乳海攪拌の神話
前述の通り、ダトゥーラはシヴァの胸から生まれたとされています。シヴァが宇宙を救うために飲んだ毒から誕生した花は、シヴァに最も近い存在なのです。
2. 毒と薬の二面性
ダトゥーラは毒でありながら薬でもあります。これはシヴァの本質——破壊は同時に創造、死は同時に再生——を完璧に象徴しています。
適切に扱えば治癒をもたらし、誤って扱えば破壊をもたらす。これは人生の選択、カルマ(行為)の結果についての深い教えでもあります。
3. 意識の変容
ダトゥーラの幻覚作用は、通常の意識状態を超えた体験をもたらします。シヴァはヨーガと瞑想の神であり、通常の意識を超越した状態(サマーディ)を象徴しています。
ダトゥーラは、物質的な手段ではありますが、意識の変容という点でシヴァの本質に通じています。
4. 夜に咲く花
ダトゥーラは夜に最も強く香ります。シヴァはしばしば夜、特に真夜中に礼拝されます。火葬場や墓地(夜の場所)に住むシヴァと、夜の花ダトゥーラは自然な組み合わせなのです。
5. 白い色の純粋さ
白いダトゥーラは、シヴァの灰を塗った白い肌、ヒマラヤの雪、そして究極の純粋さを象徴しています。
6. トゲのある果実
ダトゥーラの果実は鋭いトゲに覆われています。これはシヴァの厳しさ、霊的な道の困難さ、そして外面の防御の下にある神聖な種(真理)を象徴しています。
ダトゥーラの供養方法
伝統的な供養
- 白いダトゥーラの花を摘む(手袋を使用)
- 清らかな水で洗う
- シヴァリンガ(シヴァのシンボル)の上に置く
- または、シヴァ像の三叉の槍に刺す
- マントラ「オーム・ナマ・シヴァーヤ」を108回唱える
- 牛乳、水、蜂蜜をかける(アビシェーカ)
特別な日
- マハー・シヴァラートリ(シヴァの大いなる夜)
- 毎月の新月の日
- 月曜日(シヴァの日)
- サーワン月(7〜8月、シヴァに捧げられた月)
注意事項
- 花を摘む際は必ず手袋を使用
- 子供やペットの手の届かない場所に保管
- 供養後の花は安全に処分(燃やすか深く埋める)
- 絶対に食べたり、煎じたりしない
ビルヴァ(ベール):三つ葉の神聖な木

/ 改変なし
植物学的情報
学名: Aegle marmelos
科名: ミカン科
原産地: インド、ネパール、スリランカ
インドでの呼び名: ビルヴァ(बिल्व / Bilva)、ベール(Bael)
英名: Wood Apple, Bael Tree
樹高: 5〜15メートル
外観と特徴
葉
- 最大の特徴:三つ葉(一つの茎から3枚の葉)
- 楕円形、縁が細かく波打っている
- 艶のある濃い緑色
- 香りがある(柑橘系)
花
- 小さな白または緑がかった白色
- 甘い香り
- 5枚の花びら
果実
- 球形、直径5〜15センチメートル
- 硬い木質の殻
- 中身は香り高い果肉(食用)
- オレンジ色の果肉
- 薬効がある
木
- トゲのある枝
- 神聖な木として寺院に植えられる
- 長寿の木
ビルヴァの神話

シヴァとビルヴァの木
ある時、一人の狩人が森で日没を迎えてしまいました。猛獣を避けるため、彼はビルヴァの木に登りました。
その木の下には、偶然シヴァリンガがありました。狩人は一晩中眠らずに、獲物を待ちました。退屈しのぎに、彼はビルヴァの葉を一枚ずつちぎっては下に落としました。
知らず知らずのうちに、落とした葉はすべてシヴァリンガの上に落ち、それは一晩中続く礼拝となりました。狩人には信仰心も知識もありませんでしたが、偶然にも完璧なシヴァ礼拝を行ったことになります。
夜明けとともに、シヴァが現れ、狩人に祝福を与えました。「あなたの純粋な(無意識の)献身を受け入れる。ビルヴァの葉は、私への最高の供物である」
この神話は、形式よりも心の純粋さが大切であること、そして無意識の献身さえも神は見ているという教えを含んでいます。
三つ葉の象徴
ビルヴァの三つ葉は、ヒンドゥー教の最も深い概念を象徴しています。
1. トリムールティ(三大神)
- ブラフマー(創造)
- ヴィシュヌ(維持)
- シヴァ(破壊)
2. 三つのグナ(性質)
- サットヴァ(純粋性、調和)
- ラジャス(活動性、情熱)
- タマス(惰性、暗闇)
3. 三つの時間
- 過去
- 現在
- 未来
4. 三つの世界
- 天界
- 地上界
- 地下界
5. シヴァの三つの眼
- 太陽(右目)
- 月(左目)
- 火(額の第三の眼)
6. トリシューラ(三叉の槍): シヴァの持つ三叉の槍そのものの象徴
この三つ葉を捧げることは、宇宙のすべての側面、すべての時間、すべての世界を捧げることを意味します。
なぜビルヴァがシヴァに捧げられるのか
1. 三位一体の完璧な象徴
前述の通り、三つ葉は宇宙の根本原理を表しています。シヴァは宇宙の主であり、三つ葉を捧げることは宇宙全体を捧げることになります。
2. 冷却効果
ビルヴァの葉には冷却作用があるとされています。シヴァの額の第三の眼は開けば宇宙を焼き尽くすほどの熱を持っています。ビルヴァの葉はその熱を冷ます働きがあると信じられています。
また、シヴァが飲んだ毒の熱を冷ます効果もあるとされています。
3. 浄化の力
ビルヴァの葉には強い浄化作用があるとされ、霊的な不純物を取り除くと信じられています。シヴァは灰を塗り、純粋な状態を保つ神です。
4. 入手しやすさと永続性
ビルヴァの木はインドでは寺院の庭に必ず植えられており、いつでも新鮮な葉を摘むことができます。また、葉は摘んでからも長持ちします。
5. 香りと清涼感
ビルヴァの葉には柑橘系の清涼な香りがあります。この香りがシヴァの瞑想を助けると信じられています。
6. 完全性
3枚が一組で完結している形は、完全性、統一性を表しています。シヴァは完全なる存在、すべてを内包する存在です。
ビルヴァの供養方法
伝統的な供養
- 新鮮なビルヴァの三つ葉を摘む(必ず3枚一組で)
- 清らかな水で洗う
- シヴァリンガの頂上に置く
- または、シヴァ像の頭上に置く
- 水、牛乳、ヨーグルト、蜂蜜、ギー(浄化バター)をかける
- マントラを唱える
ビルヴァ・アシュタカム(ビルヴァの8つの詩節): 特別な讃歌で、ビルヴァの葉を捧げながら唱えます。
注意事項
- 葉は必ず3枚一組で使う(別々にしない)
- しおれた葉や虫食いの葉は使わない
- 地面に落ちた葉は使わない(木から直接摘む)
- 葉の裏を上にして置く
- 茎の部分をシヴァリンガの方向に向ける
ビルヴァの薬効
ビルヴァの果実は「ベールフルーツ」として知られ、アーユルヴェーダで重要な薬用植物です。
- 消化促進
- 下痢の治療
- 便秘の改善
- 糖尿病の管理
- 心臓の健康
- 免疫力向上
- 抗菌作用
果肉はジュースやシャーベット、ジャムとして食べられます。
シヴァに捧げてはいけない花
ケータキー(Ketaki / Pandanus)
シヴァには、ケータキー(香りの良いネジバナ、パンダナス)の花を絶対に捧げてはいけません。
嘘をついた花の神話
ある時、ブラフマー(創造神)とヴィシュヌ(維持神)が、どちらが優れているか論争になりました。するとシヴァが巨大な光の柱として現れ、「この柱の頂上か底を見つけた者が勝者だ」と告げました。
ヴィシュヌは猪に変身して地下深くへ、ブラフマーは白鳥に変身して空高く飛びましたが、どちらも端を見つけることができませんでした。
ヴィシュヌは正直に「見つけられなかった」と告白しましたが、ブラフマーは嘘をつくことにしました。途中で見つけたケータキーの花に、「私がシヴァの頭に咲いていたのを見た」と証言させ、「頂上を見つけた」と主張しました。
シヴァは激怒し、ブラフマーを呪いました。「あなたは嘘をついたので、誰もあなたを主神として礼拝しないだろう」(このためブラフマー寺院はインドに数えるほどしかありません)
そして、嘘の証言をしたケータキーの花も呪われました。「あなたは二度と私への供物として使われることはないだろう」
以来、ケータキーの花をシヴァに捧げることは厳禁となりました。
チャンパ(Champa / Plumeria)
チャンパの花も、似たような神話でシヴァに捧げることを禁じられています。
その他避けるべき花
- しおれた花
- 地面に落ちた花
- 香りが強すぎる花(ジャスミンなど、特定の状況では避けられる)
- 棘のある花(一般的には避けられる)
シヴァへの供花儀式(プージャ)
基本的なシヴァ・プージャ
1. 準備
- 身を清める(入浴)
- 白い衣服を着る
- ビルヴァの葉、白いダトゥーラ、白い花を用意
- 牛乳、水、蜂蜜、ヨーグルト、ギー、砂糖を用意(パンチャームリタ)
- ルドラークシャの数珠
- 香、ランプ
2. シヴァリンガの清浄化 まず清らかな水でシヴァリンガを洗います。
3. アビシェーカ(聖浴) シヴァリンガに以下を順番にかけます。
- 水
- 牛乳
- ヨーグルト
- 蜂蜜
- ギー
- 砂糖水
- 再び水
各液体をかける際に、マントラを唱えます。
4. ビルヴァの葉の供養
- ビルヴァの三つ葉を一組ずつ丁寧に置く
- 通常108枚(36組)、またはそれ以上
- 各葉を置く際に「オーム・ナマ・シヴァーヤ」と唱える
5. ダトゥーラの供養
- 白いダトゥーラの花をシヴァリンガの頂上に置く
- または三叉の槍に刺す
6. その他の白い花
- 白いジャスミン、白い蓮など
7. マントラ
パンチャクシャラ(5音節マントラ)
オーム・ナマ・シヴァーヤ
Om Namah Shivaya
(シヴァに帰依します)マハームリティユンジャヤ・マントラ(死を征服するマントラ)
オーム・トリヤンバカム・ヤジャーマヘー
スガンディム・プシュティ・ヴァルダナム
ウルヴァールカミヴァ・バンダナーン
ムリティヨール・ムクシーヤ・マームリタート(死からの解放と不死を求めるマントラ)
8. アールティ(灯明)
- 樟脳や油のランプを時計回りに回す
- 鐘を鳴らす
9. 瞑想
- シヴァの姿を心に描きながら瞑想
- 特にヒマラヤで瞑想するシヴァの姿
10. プラサード
- ビルヴァの葉や果実をいただく
- 家族と分かち合う
マハー・シヴァラートリ(シヴァの大いなる夜)
時期: 2月〜3月(ヒンドゥー暦パールグナ月の新月前夜)
シヴァとパールヴァティーが結婚した夜、またはシヴァがナタラージャ(舞踏の王)として宇宙の舞を踊った夜とされる、シヴァ信仰で最も重要な祭日です。
祭りの特徴
- 一日断食
- 夜通しの礼拝(4回のプージャ)
- ビルヴァの葉を何千枚も捧げる
- マントラ「オーム・ナマ・シヴァーヤ」を何千回も唱える
- シヴァの物語を読む、聞く
- 歌と踊り
- 翌朝まで眠らない
花の使用: この夜、信者たちは何千枚ものビルヴァの葉と、大量の白いダトゥーラをシヴァに捧げます。寺院は白い花で埋め尽くされます。
毎月のシヴァラートリ
毎月の新月前夜もシヴァラートリとして礼拝されますが、マハー・シヴァラートリほど盛大ではありません。
月曜日(ソーマヴァール)
月曜日はシヴァに捧げられた曜日です。多くの信者は月曜日に断食し、シヴァ寺院を訪れてビルヴァの葉を捧げます。
シヴァと花の現代的実践
インドの主要シヴァ寺院と花
ヴァーラーナシー(カーシー): ガンジス川沿いの最も神聖な都市。カーシー・ヴィシュワナート寺院では、毎日何千人もの信者がビルヴァの葉とダトゥーラを捧げる光景が見られます。寺院の庭には必ずビルヴァの木が植えられています。
ケーダールナート(ヒマラヤ): 標高3,583メートルの高地にあるシヴァ寺院。ビルヴァの木は育ちませんが、信者は遠くから葉を持参して捧げます。
カイラーシュ寺院(エローラ): 一枚岩から彫り出された壮大な寺院。シヴァの住むカイラーサ山を模した建築に、白い花々が供えられます。
日本での実践と植物の選び方
日本でシヴァに花を捧げたい場合の植物選び
ダトゥーラの代替: 日本でもチョウセンアサガオ(ダトゥーラ)は育ちますが、毒性が高いため
- 観賞用として庭に植える場合は、子供やペットが触れない場所に
- 白いトランペット型の花(ペチュニア、エンジェルトランペット)で代用も可能
- 白い大輪の花全般
ビルヴァの代替: ビルヴァの木は日本では育ちにくいため、三つ葉の植物で代用できます。
- 日本のミツバ(三つ葉)
- クローバーの三つ葉
- 柑橘類の葉(レモン、ユズなど)——ビルヴァと同じミカン科
その他の白い花: シヴァは白い花全般を好むとされています。
- 白いバラ、白い菊、白いユリ、白い椿
- 白い蓮(季節によっては生花店で注文可能)
ルドラークシャ:シヴァの涙から生まれた実
シヴァ信者が身につけるルドラークシャ(Rudraksha)の実も、植物と神話の深い結びつきを示しています。
神話: ある時、シヴァは人類の苦しみを深く瞑想しました。慈悲の涙が地上に落ち、そこからルドラークシャの木(Elaeocarpus ganitrus)が生えたとされています。
植物としての特徴
- 常緑樹、高さ15〜25メートル
- 主にネパール、インドのヒマラヤ地域に自生
- 青白い花が咲き、実は青紫色
- 実は乾燥すると茶色の硬い殻になる
- 表面に自然の溝(ムキ)がある
- 5つの溝を持つ「5ムキ」が最も一般的
この実は数珠として使われ、身につけることで心を静める効果があるとされています。
シヴァの教え:花が伝える智慧
ダトゥーラから学ぶこと
毒と薬は紙一重: ダトゥーラは使い方次第で毒にも薬にもなります。美しい花でありながら危険性を持つこの植物は、人生のあらゆる経験が、どう受け取るかで毒にも薬にもなることを教えてくれます。
破壊から生まれる美: 毒から生まれた花という起源は、困難な経験からこそ美しいものが生まれることを示しています。
二面性の象徴: ダトゥーラの美しさと危険性は、すべてのものに光と影があることを教えています。一方だけを見るのではなく、全体を理解することが智慧です。
夜の花としての神秘: 夜に最も強く香るダトゥーラは、暗闇の中でこそ輝く美しさがあることを示しています。
ビルヴァから学ぶこと
三位一体の調和: 三つ葉が一つの茎から生えているように、創造・維持・破壊は別々の出来事ではなく、一つの自然の循環です。すべてが繋がり、調和しています。
完全性への道: 3という数字は完全性を表します。身体・心・霊、過去・現在・未来——すべてが調和したとき、完全性が生まれます。
冷却と浄化: ビルヴァの葉には冷却作用があるとされ、怒りや不安を鎮め、心を清める力があると信じられています。
純粋な心の価値: 狩人の神話が示すように、知識や形式よりも、純粋な心が大切です。偶然であっても、誠実な行いは価値を持ちます。
永続性と成長: ビルヴァの木は長寿で、何代にもわたって成長し続けます。ゆっくりでも着実な成長の大切さを教えてくれます。
マハー・シヴァラートリ:花に埋もれる夜
時期: 2月〜3月(ヒンドゥー暦の新月前夜)
シヴァ信仰で最も重要な祭日です。この夜、インド中のシヴァ寺院は、ビルヴァの葉とダトゥーラの白い花で埋め尽くされます。
花の使用:
- 何千枚ものビルヴァの葉が捧げられる
- 白いダトゥーラの花が山のように積まれる
- 白い花々で祭壇が飾られる
- 夜通し、新しい花が次々と供えられる
この光景は、植物と信仰の深い結びつきを示す、最も美しい例の一つです。
まとめ:破壊と再生を象徴する花々
シヴァとダトゥーラ、そしてビルヴァの物語は、自然界の深遠な真理——破壊と創造、毒と薬、死と再生——が一つの循環の中にあることを教えてくれます。
ダトゥーラは、宇宙を救うために毒を飲んだシヴァの犠牲から生まれました。美しくも危険なこの花は、すべてのものに二面性があり、それを理解し受け入れることの大切さを象徴しています。
ビルヴァの三つ葉は、自然界のすべて——創造・維持・破壊、季節の巡り、生命の循環——が一つの根から繋がっていることを示しています。
これらの植物を通して、古代インドの人々は自然の摂理を理解し、敬意を払ってきました。毒を持つダトゥーラも、三つの葉を持つビルヴァも、ただの植物ではなく、宇宙の真理を体現する神聖な存在なのです。
白いダトゥーラの花を見るとき、ビルヴァの三つ葉に触れるとき——そこに自然の神秘と、何千年も受け継がれてきた智慧を感じることができるでしょう。
オーム・ナマ・シヴァーヤ
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