高貴な紫色の染料として、また薬草として古代から珍重されてきた「ムラサキ(紫根)」。万葉集にも歌われたこの美しい植物は、現在では絶滅危惧種となっていますが、その根から抽出される「シコンエキス」は現代の美容業界で注目を集めています。日本の文化と深く結びついたムラサキの植物的特徴から歴史、そして最新の美容効果まで詳しくご紹介します。
ムラサキ(紫根)の基本情報と植物的特徴

基本的な植物情報
学名: Lithospermum erythrorhizon
科・属名: ムラサキ科・ムラサキ属
別名: 紫草(むらさきぐさ)、紫根(しこん)
原産地: 日本、中国、朝鮮半島
生育環境: 比較的冷たい山地の草原に自生
外見的特徴
花の特徴
- 初夏から夏にかけて、白い5弁の小花が咲く(花色は紫ではありません)
- 花の真ん中に、「へこみ」がある
- 直径5mmほどの小さな花を茎の上の方に咲かせます
全体的な形状
- 草丈は80cmほどに生長し、茎は直立します
- 多年生の草本。根は太く、乾燥すると暗紫色になる
- 秋に、白い卵状の丸っこい実ができる
学名の由来と語源
学名のLithospermum(リソスペルマム)はギリシャ語の「lithos(石)+ sperma(種子)」が語源で、硬い種子の特徴を表しています。
和名ムラサキの語源は、本種が群れて咲くことから「群ら咲き」であるとする説が一般的ですが、紫色の根が由来と説明するものもあります。
ムラサキの歴史と文化的意義

古代からの貴重な染料
色の「紫」は植物のムラサキからきており、ムラサキによって染められた色を指します。植物の名前として先にあって、後に色の名前として用いられるようになったという、まさに色名の原点となった植物です。
万葉集に歌われた美しさ
「紫草(むらさき)の にほへる妹(いも)を 憎くあらば 人妻ゆゑに 我恋(こ)ひめやも」万葉集 大海人皇子
この歌では、ムラサキの美しい色合いを女性の美しさにたとえており、古代から日本人がいかにこの植物を愛でていたかがわかります。文学作品にも数多く登場し日本の伝統文化を象徴する植物として格別な扱いを受けてきた植物なのです。
薬草としての歴史
古くから生薬として「切り傷・やけど・凍傷・湿疹」など皮フ疾患の治療薬に用いられてきました。特に江戸時代には重要な発展がありました。
華岡青洲と紫雲膏 江戸時代後期に「紫根」を使用した有名な薬が生まれました。外科医として有名な華岡青洲が考案した外用薬「紫雲膏」は紫根と豚油を含む軟膏です。日本で初めて麻酔薬を使って手術した名医「華岡青洲」がシコンを使った「紫雲膏(しうんこう)」を開発したことで、その薬効が広く知られるようになりました。
ムラサキ(紫根)の花言葉

ムラサキの花言葉には、その歴史と特性を反映したものが多くあります。
- 高貴:古代から皇族や貴族が身につける紫色の染料の源
- 上品:洗練された美しい紫色から
- 神秘:希少で幻想的な存在から
- 尊敬:万葉の昔から愛され続けてきた歴史から
- 永遠の愛:多年草として長く根を張る特性から
現在の絶滅危機と保存活動
深刻な絶滅危機
近年進行する環境破壊や帰化植物の勢いに押され、絶滅の危機に瀕しています。すでに日本の草原からその姿を消しつつあり、紫草の存在そのものを知る人がほとんどいなくなってしまっているのが現状です。
野生では自生地の環境悪化によって、自生のものは非常に少なく、絶滅危惧種になっているとされ、現在、「ムラサキ」は日本では絶滅危惧種に指定され、幻の薬草と言われています。
栽培の困難さ
ムラサキは、栽培も困難で希少な絶滅危惧種の植物とされており、その繁殖と保存には専門的な知識と技術が必要です。半日陰の排水のよい土地を好むという特殊な生育環境も、栽培を困難にしている要因の一つです。
シコンエキスの美容・健康効果

主要成分「シコニン」の働き
このシコンエキスの主要成分”シコニン”と”シコニン誘導体”が肌に働きかけます。効果は、古くから評価されており、紫根エキスの色素内にある6種のシコニン誘導体の「抗菌作用」「皮膚活性化作用」などが研究で明らかになりています。
具体的な美容効果
1. エイジングケア効果 紫根エキスは、コラーゲンを産み出す線維芽細胞の増殖効果とコラーゲンを保護する作用があることを発見されており、肌のハリと弾力の維持に効果が期待されています。
2. 抗酸化作用 紫根エキスには肌だけでなく、髪にも抗酸化作用があります。紫根エキスによって肌への角層や髪のタンパク質の抑制効果があるというデータもあります。
3. 肌荒れ防止効果 現在医薬部外品原料規格に紫根抽出物やシコニンが収載されており、肌荒れを防ぐ効果、ハリ・弾力などの改善効果に注目が集まっています。
4. 多様な肌質への対応 ドライ、オイリー、敏感肌、その他トラブルを持つ肌を正常で安定した状態へ導く紫根として、幅広い肌タイプに対応できる特徴があります。
現代の研究成果
紫根エキスは化粧品に配合することで、肌荒れ防止効果、肌と毛髪の抗老化効果、ダメージ防止効果などが期待されるという研究結果が報告されています。
シコンエキス購入時の選び方と品質の見極め
シコンエキス製品の選び方
表示名の確認
- 化粧品表示名:ムラサキ根エキス、
- 医薬部外品表示名:シコンエキス、油溶性シコンエキス(1)
- INCI名「LITHOSPERMUM OFFICINALE ROOT EXTRACT」など、正式な表示名を確認しましょう。
品質指標
- 原料の産地表示
- 抽出方法の明記
- 濃度の表示
- 保存料の有無
信頼できるメーカー
- 医薬部外品認可を受けている
- 品質管理体制が整っている
- 第三者機関による安全性試験済み
まとめ
万葉の昔から愛され続けてきたムラサキ(紫根)は、現在絶滅の危機に瀕している貴重な植物です。しかし、その根から抽出されるシコンエキスは、現代の美容科学においても高い評価を受けており、エイジングケアや肌荒れ防止に優れた効果を発揮します。
ムラサキの多面的価値
- 文化的価値:日本の伝統文化を象徴する植物
- 美容的価値:コラーゲン保護、抗酸化、肌荒れ防止効果
- 歴史的価値:万葉集から現代まで受け継がれる美の象徴
- 保護の必要性:絶滅危惧種としての保存活動の重要性
現代を生きる私たちにとって、ムラサキは単なる美容成分を超えた存在です。日本の美意識と自然観を現代に伝える文化的遺産であり、持続可能な美容を考える上でのヒントを与えてくれる植物でもあります。
シコンエキスを使用することで美肌を目指すと同時に、この貴重な植物の保護と文化継承にも思いを馳せてみませんか。一人ひとりの意識と行動が、ムラサキという「幻の薬草」を未来に残すことにつながるのです。
始めてみませんか
- シコンエキス配合の化粧品で自然派スキンケア
- ムラサキの栽培や保存活動への参加
- 万葉集などの古典文学でムラサキの歌を鑑賞
- 日本の植物文化についての学習
ムラサキが織りなす美と文化の世界で、より豊かなライフスタイルを見つけてください。