PR

ケイローンとヤグルマギク——癒しの賢者と傷を治す花

ケイローンとヤグルマギク|傷ついた賢者と癒しの青い花 アイキャッチ 神々と花 ギリシャ神話編

ペリオン山の洞窟に、一人の賢者が住んでいました。半人半馬の姿——ケンタウロスと呼ばれる種族です。しかし彼は、酒に溺れ暴力を振るう他のケンタウロスたちとは、まったく異なる存在でした。

その名はケイローン(古希: Χείρων、Kheírōn)——「手」を意味する名を持つ者。

彼の手は、弓を引き、竪琴を奏で、薬草を調合し、そして傷ついた者を癒しました。その手から、数多くの英雄たちが生まれ、古代ギリシャの医術が花開き、星空に新しい物語が刻まれました。

そしてその彼が、自らの癒えない傷を和らげるために見出したのが——野に咲く青い花、ヤグルマギク(Centaurea cyanus)だったのです。

プロフィール

Pierre Puget
Public Domain, Wikimedia Commons

ギリシャ語表記: Χείρων (Kheírōn)
語源: χείρ(手)——癒しの手、教える手、創造する手
ラテン語名: Chiron(キロン)
別名: 最も正しき者、ケンタウロスの賢者

役割・司るもの

  • 医術と薬草学
  • 音楽と竪琴
  • 狩猟と武術
  • 予言と占星術
  • 英雄たちの教育
  • 知恵と慈悲

シンボルと容姿

ケイローンは、威厳ある成熟した男性の上半身と、力強い馬の下半身を持つケンタウロスとして描かれます。

彼の表情は穏やかで知的、しかしどこか憂いを帯びています——不死の身でありながら、永遠の苦痛を負った者の顔です。

手には薬草の束、または竪琴、あるいは弓。時に若い弟子を背に乗せた姿で描かれます——彼の本質は「教育者」だからです。

主なシンボル

  • 薬草(特にヤグルマギク)
  • 竪琴(音楽の教師として)
  • 弓と矢(狩猟と武術の達人として)
  • 洞窟(ペリオン山の住処)
  • 星座・射手座(死後の姿)

神々の系譜——特別な出自

父: クロノス(時の神、ティタン族の王)
母: ピリュラー(ニンフ、海の娘)
兄弟: ドロプス(伝承による)

妻: カリクロー(ニンフ)
娘: ヒッペー(後に星座となる)

一説による子供たち

  • エンデーイス(アイアコスの妻、ペーレウスとテラモーンの母)
  • テティス(女神、ペーレウスの妻、アキレウスの母——別説)

ケイローンの出自は、他のケンタウロスとはまったく異なります。

一般的なケンタウロスは、イクシオーンとヘラの幻影との間に生まれた野蛮な種族です。しかしケイローンは、ティタン族の王クロノスの血を引く高貴な存在でした。

クロノスが妻レアの目を逃れるため、馬の姿に変身してニンフのピリュラーと交わった——その結果生まれたのが、半人半馬のケイローンでした。

神々の血と動物の姿——この二重性が、ケイローンを特別な存在にしました。理性と本能、文明と自然、知恵と力——彼はそのすべてを兼ね備えていたのです。

そして何より、彼は不死の身でした。神の血を引く者として、永遠の命を与えられていたのです。

ペリオン山の賢者——薬草を育て、英雄を育てる

ウジェーヌ・ドラクロワ「アキレウスの教育」(1862)
Public Domain / Image: Wikimedia Commons

テッサリアのペリオン山——その中腹にある洞窟が、ケイローンの住処でした。

洞窟の周りには、彼が丹精込めて育てた薬草園が広がっていました。ヤグルマギク、ヨモギ、セントジョーンズワート、ウイキョウ——あらゆる癒しの植物が、そこで栽培されていました。

ケイローンはアポロンから音楽、医学、予言の技を学びました。アルテミスからは狩猟の術を授かりました。こうして彼は、あらゆる知識の達人となったのです。

ケイローンの教え子たち——神話の英雄たちの名簿

病人が訪ねてくれば、彼は薬草を調合して癒しました。しかし彼の最も重要な役割は、英雄たちの教育でした。

アスクレーピオス(医神)
アポロンの息子。ケイローンから医術のすべてを学び、後に死者すら蘇らせるほどの名医となりました。彼の杖に巻きつく蛇は、今も医療のシンボルです。

アキレウス(トロイア戦争最強の英雄)
ペーレウスとテティスの息子。幼い頃からケイローンの背に乗り、武術、狩猟、医術、音楽を学びました。ケイローンは彼に獅子の心臓と野生動物の骨髄を与え、比類なき勇者に育て上げました。

イアーソーン(アルゴー船の船長)
金羊毛を求める冒険の指導者。ケイローンのもとで育ち、航海術、戦術、リーダーシップを学びました。

ヘラクレス(最大の英雄)
ゼウスの息子。ケイローンから弓術と戦闘技術を学びました。しかし皮肉なことに、この弟子が師に致命傷を与えることになります。

カストール(双子座の片割れ)
レーダーとともに双子の英雄。馬術の達人となったのは、ケイローンの教育のおかげでした。

アクタイオーン(狩人)
ケイローンの養子。優れた狩人として育ちましたが、後にアルテミスの怒りを買い、鹿に変えられて自分の猟犬に殺されるという悲劇的な最期を遂げました。

テセウス、ペレウス、アイアコス、アスクレピオス、ディオスクーロイ——
数え切れないほどの英雄たちが、ペリオン山の洞窟で学び、成長し、そして伝説となっていきました。

ケイローンは、彼らに知識だけでなく、知恵を授けました。力だけでなく、正義を教えました。技術だけでなく、慈悲の心を育てました。

彼は言いました——「真の英雄とは、最も強い者ではない。最も賢い者でもない。最も正しい者である」

悲劇の矢——弟子の手による、運命の一撃

しかし運命は、時に残酷です。

ある日、ヘラクレスがラピテース族のポロスを訪ねました。ケンタウロスであるポロスは、客人に美酒を振る舞いました。

しかしその酒の香りが、他のケンタウロスたちを引き寄せてしまいました。酒に酔った彼らは、本能のままに暴れ始めました。

ヘラクレスは彼らを追い払うため、弓を手に取りました。その矢には、ヒュドラ(九つの頭を持つ水蛇)の猛毒が塗られていました——かつてヘラクレスが十二の功業の一つとして倒した怪物の、治癒不可能な毒です。

矢が放たれました。一本、また一本——逃げ惑うケンタウロスたちを追って。

そしてその一本が、洞窟の入口に立っていたケイローンの膝を貫いたのです。

癒えない傷——不死という呪い

ケイローンは膝を押さえて倒れました。激痛が身体を貫きます。

ヒュドラの毒——それは、いかなる薬も癒すことができない劇毒でした。触れた肉を腐らせ、骨まで侵し、終わることのない苦痛をもたらします。

普通の者なら、すぐに死ぬでしょう。それが慈悲というものです。

しかしケイローンは不死身でした。

死ぬことができない。しかし治ることもできない——これ以上の苦痛があるでしょうか。

ヘラクレスは泣きました。愛する師を、自らの手で傷つけてしまった。彼は必死にケイローンを介抱しようとしましたが、どうすることもできませんでした。

「行きなさい、我が弟子よ」とケイローンは言いました。「これは事故だ。誰も責めることはできない。あなたには、まだ成し遂げるべき功業が残っている」

ヘラクレスは去りました。しかしその心には、生涯消えることのない傷が刻まれました。

ヤグルマギクとの出会い——青い花が教えた慰め

ケイローンは洞窟にこもりました。彼は医術の達人です——自らの知識のすべてを使って、傷を癒そうとしました。

あらゆる薬草を試しました。ヨモギ、アロエ、没薬、マンドレイク——しかし何も効きませんでした。ヒュドラの毒は、すべての治療を嘲笑うかのように、身体を蝕み続けました。

ある日、ケイローンは洞窟から這い出て、麦畑の縁に辿り着きました。

そこに、青い花が咲いていました——ヤグルマギクです。

風に揺れる青い花弁。清らかで、素朴で、しかし何か神聖なものを感じさせる花。

ケイローンはその花を摘み取りました。彼の広大な知識が、この花の秘められた力を感じ取ったのです。

花と葉を潰し、傷口に当てました——

痛みが、少し和らぎました。

完全に消えたわけではありません。ヒュドラの毒は、相変わらず身体を焼いています。しかし、耐えられる程度に——生きていくことができる程度に。

ヤグルマギク——この小さな青い花は、偉大な賢者ケイローンに、わずかな慰めを与えました。

ヤグルマギクの力——古代の薬草学

植物学的情報

学名: Centaurea cyanus
科名: キク科
属名の由来: Centaurea(ケンタウレア)= ケンタウロス(ケイローン)に由来
種小名の由来: cyanus = ギリシャ語で「青」
原産地: ヨーロッパ
開花時期: 5月〜7月
花の色: 鮮やかな青(まれに白、ピンク、紫)

外観の美しさ

ヤグルマギクは、高さ30〜90センチメートルに成長する一年草です。細長い銀緑色の葉を持ち、茎の先端に直径3〜5センチメートルの頭花を咲かせます。

最も特徴的なのは、その青です——空の青でも、海の青でもない。もっと深く、もっと純粋な青。まるで悲しみを昇華させたような色です。

花弁は細かく切れ込み、繊細なレースのよう。中心部には小さな筒状花が密集しています。

麦畑の縁に、この青い花が点在する光景——黄金と青のコントラストは、古代から詩人や画家たちを魅了してきました。

古代世界での呼び名

  • ギリシャ語: κενταύρειον (kentaureion)——ケンタウロスの草
  • ラテン語: centaurea, cyanus
  • 英語: Cornflower(麦畑の花)、Bachelor’s Button
  • フランス語: Bleuet(小さな青)
  • ドイツ語: Kornblume(穀物の花)
  • 日本語: 矢車菊、矢車草

なぜケイローンの花なのか

学名 Centaurea は、まさにケイローン(Centaur = ケンタウロス)に由来します。

古代の博物学者プリニウスは、この花について記しています——「ケンタウロスのケイローンが、ヘラクレスの矢によって負った傷を、この草で癒した」

この伝説により、ヤグルマギクは古代から「癒しの花」として知られるようになりました。

薬効と民間療法での使用

古代ギリシャ・ローマ時代から、ヤグルマギクは薬草として重宝されました。

主な薬効

  • 抗炎症作用——傷や腫れを鎮める
  • 収斂作用——出血を止め、傷の治りを早める
  • 利尿作用——体内の毒素を排出
  • 眼の洗浄——結膜炎や眼精疲労の緩和

中世ヨーロッパでの使用

  • 傷の手当て——花や葉を潰して患部に当てる
  • 目薬——花を煎じた液で目を洗う
  • 胃腸薬——花のハーブティーで消化不良を改善
  • 口内炎——うがい薬として使用

近代での評価

現代の研究により、ヤグルマギクには以下の成分が含まれることが確認されています。

  • アントシアニン(青色色素、抗酸化作用)
  • フラボノイド(抗炎症作用)
  • タンニン(収斂作用)

フランスでは今でも、ヤグルマギクの花水が「目の疲れを癒すローション」として販売されています。

象徴的意味

  • 繊細さ——薄い花弁、儚い美しさ
  • 献身——癒しを与える花
  • 誠実——質素ながら確かな効能
  • 希望——青は天を、希望を象徴する色
  • 追悼——フランスでは戦没者を悼む花(青いコーンフラワー)

耐えがたき苦痛——不死の者の選択

ヤグルマギクは痛みを和らげましたが、完全に治すことはできませんでした。

日々、ケイローンは苦しみました。傷は決して癒えず、毒は身体を侵し続けました。

不死の身——かつては祝福と思われたそれが、今は呪いとなりました。

「死ねたらどんなに楽だろう」

賢者ケイローンは、初めて死を望みました。

しかし不死の者が、どうやって死ぬことができるでしょうか。

プロメーテウスとの交換——二人の苦しみが交わる時

Frans Snyders & Peter Paul Rubens, Public Domain, Wikimedia Commons
Frans Snyders & Peter Paul Rubens
Public Domain, Wikimedia Commons

その頃、別の場所で、別の不死の者が苦しんでいました——ティタン族のプロメテウス。

プロメテウスは、人類に火を与えた罪で、ゼウスの怒りを買いました。彼はコーカサス山の岩に鎖で繋がれ、毎日、巨大な鷲に肝臓を啄まれるという刑に処されていました。

不死の身である彼の肝臓は、夜のうちに再生します——そして翌日、また啄まれる。永遠に続く拷問です。

しかしある条件がありました——「別の不死の者が、自発的に不死性を放棄し、代わりに死を受け入れるならば、プロメテウスは解放される」

ケイローンは、この話を聞きました。

賢者は長い時間、考えました。

彼は自分の苦痛から逃れたいのか、それとも正義のためにプロメテウスを救いたいのか——

おそらく両方でした。しかしそれでも、彼の決断は正しいものでした。

ケイローンは、オリュンポスへ使者を送りました——「私の不死性を、プロメテウスに譲りたい」

最期の日々——弟子たちとの別れ

ゼウスは、この申し出を受け入れました。

ケイローンの死が近づいているという知らせは、すぐに広まりました。

弟子たちが、ペリオン山に集まってきました。

アキレウスは泣きました。イアーソーンは師の手を握りました。アスクレーピオスは必死に治療を試みましたが、もはや何もできませんでした。

ケイローンは、一人一人に言葉を残しました。

「お前たちに教えたすべては、ただ一つのことに繋がる——正しく生きること。力ではなく、知恵ではなく、正しさこそが、人を英雄にする」

「私の身体は滅びる。しかし私が教えたことは、お前たちの中に生き続ける。そしてお前たちの行いを通じて、世界に広がっていく」

「苦しみを恐れるな。苦しみは教師だ。私もまた、この傷から多くを学んだ——忍耐、謙虚さ、そして死すべき者たちの苦しみへの理解を」

洞窟の入口に咲くヤグルマギクを指して、彼は言いました。

「この青い花を覚えておきなさい。小さく、目立たず、しかし確かに癒しの力を持つ。真の知恵とは、このようなものだ——華やかではないが、本質的な助けとなる」

死と変容——星になった賢者

やがて、約束の日が来ました。

プロメテウスの鎖が解かれました。彼は自由になり、ケイローンの不死性を受け継ぎました。

そしてケイローン——彼は初めて、死すべき者となりました。

弟子たちに囲まれて、賢者は静かに目を閉じました。長い長い苦痛の後の、最初の安らぎです。

「ありがとう」——それが彼の最期の言葉でした。

弟子たちに対してか、ヤグルマギクに対してか、それとも訪れた死に対してか——誰にも分かりません。

ケイローンの魂が身体を離れた瞬間、ゼウスが現れました。

「この高潔な魂を、地上に留めることはできない」

雷鳴とともに、ケイローンの姿は光となって天に昇りました。

そして夜空に、新しい星座が現れました——射手座(サギタリウス)。

弓を構えたケンタウロスの姿——それは永遠に、ケイローンを記憶するための星々です。

射手座——夜空に生きる教師

https://astro.allok.biz/constellation/sagittarius/

射手座は、黄道十二宮の一つです。11月22日から12月21日頃、太陽がこの星座を通過します。

古代バビロニアでは「弓を持つ神」、ギリシャでは「ケイローン」として知られていました。

主な星々

  • ルクバト(Rukbat)——アラビア語で「射手の膝」
  • カウス・アウストラリス(Kaus Australis)——「南の弓」、射手座で最も明るい星
  • アスケラ(Ascella)——「脇の下」

射手座の中心部、天の川の最も明るい部分——そこに銀河系の中心があります。無数の星が密集する、宇宙で最も壮麗な領域の一つです。

ケイローンは今、そこにいます。永遠の教師として、夜空から見守っています。

ダンテの『神曲』に登場するケイローン

中世イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリは、ケイローンを『神曲』「地獄篇」第十二曲に登場させました。

詩人ダンテと案内人ウェルギリウスが、地獄の第七圏(暴力の罪人が罰される場所)に降りていった時、そこには煮え立つ血の河「ピレゲトン」がありました。

河岸には、ケンタウロスたちが弓を持って警備していました——罪人たちが河から逃げ出さないように、矢を射かけるのです。

その中に、ケイローンがいました。

ダンテは書いています——

「彼らの中央に、偉大なるケイローンがいた。 かつてアキレウスを育てた者。」

ケイローンはダンテとウェルギリウスを認め、静かに言葉を交わしました。そして仲間のケンタウロス、ネッソスに命じて、二人を安全に河の対岸へ導かせました。

地獄の中にあってさえ、ケイローンは知恵と威厳を保っていたのです——暴力的な他のケンタウロスを統率する唯一の存在として。

これは、ケイローンの物語が中世ヨーロッパでも生き続けていたことを示しています。千年以上の時を経ても、賢者の名は忘れられませんでした。

エレウシスの秘儀との繋がり——癒しと再生

ケイローンの物語は、エレウシスの秘儀とも深い関連があります。

エレウシスの秘儀は、デメテルとペルセポネを中心とした古代ギリシャ最大の宗教儀式でした——そこでは、死と再生の神秘が教えられました。

ケイローンもまた、死と再生の物語を体現しています。

  • 地中に埋められる種——傷を負い、地下(死)へと近づくケイローン
  • 苦しみの期間——癒えない傷、耐えがたき苦痛
  • 自発的な犠牲——不死性を放棄し、死を選ぶ
  • 変容と再生——星座として天に昇る

麦穂がエレウシスの秘儀で最高の啓示として示されたように、ヤグルマギクはケイローンの啓示でした——小さな花が、偉大な賢者に慰めを与えた。

どちらの物語も、同じ真理を語っています——死は終わりではなく、変容である。苦しみには意味がある。そして、最も小さなものが、最も大きな癒しをもたらすことがある。

芸術に描かれたケイローン

Eugène Delacroix, Public Domain, Wikimedia Commons
Eugène Delacroix
Public Domain, Wikimedia Commons

古代の描写

古代ギリシャの壺絵には、ケイローンが頻繁に登場します。

  • アキレウスを背に乗せるケイローン——師と弟子の絆
  • 竪琴を奏でるケイローン——音楽教師としての姿
  • 薬草を手にするケイローン——医者としての姿
  • 矢に倒れるケイローン——悲劇の瞬間

ルネサンスから近代

ポンペイのフレスコ画(紀元1世紀)
ケイローンがアキレウスに竪琴を教える場面。優しい表情の賢者と、真剣な眼差しの少年。

アキレウスを教え導くケイローン
Uploaded by muesse, Public Domain, Wikimedia Commons

ウジェーヌ・ドラクロワ「アキレウスの教育」(1862)
ロマン派の巨匠による劇的な構図。ケイローンの背に乗った幼いアキレウスが、弓を構えています。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
ラファエル前派の画家も、ケイローンの物語を描きました。

現代の解釈

占星術において、「キロン」という小惑星(準惑星)が1977年に発見されました。これはケイローンにちなんで名付けられ、「傷ついた癒し手」を象徴するとされています。

心理学では、「キロンの傷」という概念があります——自分が負った傷を通じて、他者を癒す力を得る。ケイローンのように。

傷と癒しの物語——今も響く神話

ケイローンの物語は、二千年以上の時を超えて、今もなお私たちの心に触れます。

なぜでしょうか。

それは、この物語が普遍的な真実を映し出しているからです——完璧な者などいない。誰もが何かの傷を負っている。そして時に、その傷こそが、最も深い知恵の源となる。

医術の達人が、自らの傷を癒せなかった

ケイローンは、あらゆる薬草を知り、あらゆる治療法を修めていました。しかし彼自身の膝の傷は、決して完全には治りませんでした。

現代も、同じような逆説を抱えている人がいるかもしれません。

他者の心を癒すカウンセラーが、自分の心の傷を抱えている。子供たちを導く教師が、自分の迷いを持っている。人を笑顔にする人が、一人の時は涙を流している。

それは偽善でしょうか。いいえ——それこそが、ケイローンの物語が語る真実です。

傷を知る者だけが、傷の痛みを理解できる。不完全さを抱える者だけが、他者の不完全さに優しくなれる。

小さな青い花が、偉大な賢者を慰めた

ヤグルマギク——麦畑の縁に咲く、素朴な青い花。

それは、ヒュドラの毒を完全に消し去ることはできませんでした。しかし、耐えがたき痛みを、耐えられる痛みに変えました。

人生において、すべてを解決する魔法はありません。しかし、小さな慰めはあります。

友人からの短いメッセージ。窓辺に置かれた一輪の花。温かい飲み物。静かな音楽。

これらは問題を消し去りはしません。しかし、もう一日、もう一歩、前に進む力をくれます。

ケイローンが青い花に見出したのは、完全な治癒ではなく——生き続けるための、わずかな希望でした。

傷は、より深い知恵を生む

ケイローンは、傷を負う前から賢者でした。しかし、癒えない傷を負った後——彼の知恵は、おそらくさらに深まったのです。

苦しみの中でしか学べないことがあります。喪失の中でしか見えないものがあります。痛みの中でしか触れられない真実があります。

ケイローンは、弟子たちに医術や武術を教えました。しかし最も重要な教えは、言葉ではなく——彼自身の生き方が示したものだったかもしれません。

どう耐えるか。どう受け入れるか。どう尊厳を保つか。

不死を手放し、星になった賢者

ケイローンは、永遠の命を持っていました。しかし彼は、それを手放すことを選びました。

苦痛から逃れるため? それだけではないでしょう。

プロメテウスを救うため。そして、自らの物語を完成させるため。

死は終わりではなく、変容でした。肉体は滅びましたが、魂は星となって天に昇りました。

射手座——今も夜空に輝く、ケイローンの姿。

地上での苦しみは終わりました。しかし彼の存在は終わっていません。星々として、物語として、そして一人一人の記憶の中に——彼は生き続けています。

洞窟は消えても、教えは残る

ペリオン山の洞窟は、もう存在しません。しかしケイローンが教えたことは、消えていません。

アスクレーピオスが学んだ医術は、医神として後世に伝わりました。アキレウスが学んだ勇気は、トロイア戦争の物語として永遠に語り継がれています。

ケイローンの洞窟は失われましたが、彼が灯した知恵の火は——無数の手から手へと、今もなお受け継がれているのです。

ヤグルマギクの現代での姿

麦畑の青い思い出

かつてヨーロッパの麦畑には、ヤグルマギクが普通に咲いていました。黄金の麦の中に点在する青い花——農民たちはそれを「麦畑の宝石」と呼びました。

しかし現代の農業——除草剤の使用、種子の選別——によって、野生のヤグルマギクは激減しました。

戦没者追悼の花——フランスの青い記憶

第一次世界大戦後、フランスではヤグルマギク(Bleuet)が戦没者を追悼する花となりました。

イギリスが赤いポピーを用いたのに対し、フランスは青いコーンフラワーを選びました——フランスの国旗の青、そして若い兵士たちが着ていた青い制服を象徴して。

毎年11月11日(休戦記念日)と5月8日(戦勝記念日)、フランスの人々は青いヤグルマギクのブローチを胸につけます。

ケイローンの花は、こうして新しい意味を得ました——戦争で傷ついた者たちを悼み、平和を祈る花として。

庭園での栽培

今日、ヤグルマギクは世界中の庭で栽培されています。育てやすく、美しく、そして薬効もある——園芸家たちに愛される花です。

品種改良により、青だけでなく、ピンク、白、紫、黒に近い深紅など、様々な色が生まれました。

しかし最も愛されるのは、やはり原種の青——ケイローンが見出した、あの空のような、悲しみのような、希望のような青です。

ハーブティーと化粧品

現代でも、ヤグルマギクの花は利用されています。

  • ハーブティー——穏やかな味わい、目の疲れや炎症の緩和
  • フローラルウォーター——化粧水、特に目の周りのケア
  • 入浴剤——リラックス効果、皮膚の炎症緩和
  • ドライフラワー——ポプリ、装飾

フランスの老舗薬局「シャイヨー薬局」などでは、今でもヤグルマギクの花水が売られています——「疲れた目のための水」として。

夜空を見上げるとき

夜、南の空を見上げてください。

夏の終わりから秋にかけて、天の川の最も明るい部分に、射手座が輝いています。

弓を構えたケンタウロス——それはケイローンです。

肉体は滅びました。しかし魂は、永遠に星となって輝き続けています。

彼は今も、見守っています——かつて弟子たちを見守ったように。

「お前たちは一人ではない」

「苦しみには意味がある」

「小さな優しさを大切にしなさい」

「正しく生きなさい」

——星々の瞬きが、そう語りかけているようです。

ケイローンの洞窟は失われました。しかし彼の教えは失われていません。

麦畑の青い花が、それを覚えています。

夜空の星々が、それを語り継いでいます。

そして——傷つき、学び、そして他者を癒そうとするすべての人の中に——ケイローンの魂は、今も生き続けているのです。


ヤグルマギク(Centaurea cyanus
花言葉: 繊細、優美、幸福、教育、献身
開花期: 5〜7月
分布: ヨーロッパ原産、現在は世界中に帰化
用途: 薬用(目薬、傷の手当て)、観賞用、ハーブティー

射手座(Sagittarius)
時期: 11月22日〜12月21日頃
特徴: 銀河系の中心方向に位置し、天の川が最も明るい領域



メインページに戻る: 神々と花の物語

タイトルとURLをコピーしました