リンデンバウムは、ヨーロッパ原産の落葉高木です。日本では「セイヨウボダイジュ」や「リンデンツリー」などと呼ばれています。
リンデンのほんのりと甘い香りは、ハーブティーやハチミツで楽しめます。やさしい味わいのリンデンですが、多くの効能や利用方法があり、ヨーロッパでは「千の用途を持つ木」といわれ親しまれています。
その花、葉、樹皮には、古来より人々の健康を支え、美しさを引き出す力があると信じられてきました。
この記事では、古代からの伝説にまで遡るリンデンの秘密を、ギリシャ神話に隠されたエピソードと共にご紹介します。
美肌ハーブ リンデンについて
リンデン・ウッド (Linden wood)
- 別名: コモン・ライム (Common lime)、セイヨウボダイジュ (西洋菩提樹)、セイヨウシナノキ (西洋科の木)、リンデンツリー (Linden Tree)、リンデンバウム (Lindenbaum)
- 学名: Tilia europaea
- 科・属名: アオイ科(またはシナノキ科)シナノキ属
- 花言葉: 夫婦愛、結ばれる愛、結婚、熱愛
- 誕生花: 7月9日、7月30日、8月23日
リンデンバウムは、初夏から夏にかけて、黄色い花をたくさん咲かせ、甘い香りを辺りに漂わせます。
花、葉、樹皮など、それぞれの部位に異なる効能があり、古くから民間薬として利用されてきました。
その他にも、花はミツバチに蜜を供給したり、木は楽器や彫刻、家具の材料として…その多様性からヨーロッパでは「千の用途を持つ木」といわれています。
リンデンバウムという呼び名はドイツ語に由来し、古高ドイツ語の「lint(麻・繊維)」と「boum(木)」という2つの単語が組み合わされています。古代から中世にかけて、菩提樹は繊維として重要な役割を果たしていたそうです。
英語ではコモン・ライムと呼ばれることが一般的です。フランスでは、ティユール(tilleul)という名前で知られています。
リンデンはキリスト教以前の宗教でも重要視され、古代ゲルマン民族はリンデンを神聖な木として崇めていました。リンデンの木の下でお祭りや裁判が行われることもあったと伝えられています。
ドイツの首都ベルリンにはリンデンの並木道がある“ウンター・デン・リンデン”という大通りがあり、中世ヨーロッパではリンデンは愛や自由の象徴として親しまれていました。
現在も並木道には約60本の菩提樹が植えられており、その緑の木陰が美しい散歩道は、春には白い花が咲き誇り、訪れる人々を魅了します。
リンデンの成分と利用法
成分と効能
リンデンには、次のような成分が含まれています。
- ファルネソール 精油成分で、心をリラックスさせてくれます。眠れない時に。
- タンニン リンデンの葉や木質部に含まれています。
- ケルセチン 血管や血流をサポート
- クマリン ポリフェノールの一種
リンデンの利用法
リンデンフラワーティーは甘い香りと優しい味わいで、心身を穏やかに整え、安らかな眠りを誘ってくれます。
それぞれ効能の異なる、「花、苞、葉」が使われます。木質部(白木質)を使用したリンデンウッドティーは、リンデンフラワーティー同様、心を落ち着かせ、安眠を促す効果が期待できます。
1. 眠れない夜に
寝る前にリンデンティーを1杯ゆっくりと味わうことで、心身をリラックスさせ、深い眠りにつきやすくします。
2. 風邪のひき始め
風邪のひき始めには、リンデンティーを温めて飲むことで、発汗を促し、体を温め、風邪の症状を緩和します。
3. 喉の痛みや咳
喉の痛みや咳がある場合は、リンデンティーをうがい薬として使うこともできます。
4. 消化不良
リンデンティーを食後に飲むことで、胃腸の調子を整えます。
5. 勉強や仕事中に
仕事や勉強の合間に、リンデンティーを1杯ゆっくりと味わうことで、心を落ち着かせ、集中力を高めることができます。
6.高血圧
リンデンは特に不眠や睡眠の質の低下によるストレス性の高血圧に良いといわれています。
化粧品成分としての利用
リンデンバウムの花から得られる抽出物は、化粧品成分としても利用されています。
化粧品表示名 セイヨウシナノキ花エキス
医薬部外品表示名 シナノキエキス
INCI名 Tilia Vulgaris Flower Extract、Tilia Europaea Flower Extract
その主な作用は以下の通りです。
- アレルギーを鎮める効果 セイヨウシナノキ花エキスは、肌のアレルギー反応を抑える働きがあります。花粉症やアトピー性皮膚炎など、肌が敏感になっている人にも優しい成分です。
- 肌のハリを保つ効果 コラーゲンを分解する酵素の働きを抑制することで、肌のハリや弾力を保つ効果が期待できます。シワやたるみを気にしている方におすすめです。
- 肌を保護する効果 外部刺激から肌を守り、健やかな肌へと導きます。
セイヨウシナノキ花エキスには、ヒスタミンというアレルギー反応を起こす物質の働きを抑えたり、コラーゲンを分解する酵素の働きを抑制したりする成分が含まれています。これらの働きが、肌のアレルギー症状を鎮め、肌のハリや弾力を保つことにつながるのです。
化粧水、美容液、クリームなど、様々なスキンケア製品に配合されています。特に、敏感肌用やエイジングケア用の化粧品によく使われています。
セイヨウシナノキ花エキスの基本情報・配合目的・安全性 |引用元: 化粧品成分オンライン (cosmetic-ingredients.org)
リンデンのハチミツ
リンデンの花は、豊富な蜜を含んでいるため、世界中でミツバチの重要な蜜源として知られています。ミツバチはリンデンの花から蜜を集め、それを巣に持ち帰ってハチミツを作ります。
そのハチミツは爽やかなハーブ調の香りで、ヨーロッパではリンデンハニーと呼ばれ、高級なはちみつとして人気があり、喉が痛い時や、眠れない夜に紅茶やお湯に入れてハーブティのように飲まれています。
そして、日本でもリンデンのハチミツが生産、販売されています。東北より北の地域や、標高が高く冷涼な地域でしか採取できないため、それほど多く生産されていませんが、現在は、無印良品でも非加熱の生ハチミツが販売されていて気軽に試すことができます。色は濃い黄色でなめらか、香りはハーブの香りです。
マドレーヌなど焼き菓子に使うと、やさしい甘さと香りが楽しめますが、生ハチミツの自然の恵みをそのままとりいれるためには過熱しないのがおすすめです。
*ハチミツにはボツリヌス菌が含まれている可能性があるので、1歳未満の乳児には与えないようにしてください。
ネット販売限定で、無くなり次第終了だそうなので、在庫があればお試しください。サイトには養蜂場や生産者の方の紹介もあり、丁寧に心をこめて作られていることが分かります。ミツバチに魅せられ、日本中の養蜂家を訪ねて紡ぐ、国産”生”はちみつ| 無印良品 (muji.com)
リンデンの花言葉と物語、名前の由来、歴史
花言葉
リンデンの花言葉は、夫婦愛、結ばれる愛、結婚、熱愛。
英語やフランス語でも、婚姻(英:matrimony)や夫婦愛(英:conjugal love・仏:amour conjugal)という花言葉があります。
ギリシャ神話
ギリシャ神話の中には、リンデンの由来となっている物語があります。
ある時、王神ゼウスと妻ヘラが、旅先で貧しい人間の老夫婦にめぐり合います。心をこめて二人をもてなした老夫婦に感銘を受けたゼウスが、二人にご褒美を与えようとすると、夫婦は「死後もお互いが離れ離れにならないようにしてください」と願いました。
それでゼウスは夫フィレモンを樫の木に、妻バウキスをリンデンに変えて、2本の樹がずっと寄り添っていけるようにしました。この物語が夫婦愛、結ばれる愛、結婚、熱愛という花言葉の由来といわれています。
シューベルト作曲 「冬の旅」歌曲集 第5番
「菩提樹」(ドイツ語: Der Lindenbaum)は、フランツ・シューベルトが作曲し、ヴィルヘルム・ミュラーが作詞した「冬の旅」歌曲集の第5曲です。この曲では、失恋した若者が旅に出る際、かつて町の門前の菩提樹の下で見た甘い夢を懐かしむ様子が描かれています。切なくて美しい曲です。
シューベルトの冬の旅以外にも、ナイチンゲールが木にとまり、美しい声を響かせることから、菩提樹は恋愛詩の題材としてよく使われました。
ヨハン・ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ: 「パルチヴァール」の中で、菩提樹を騎士と乙女の出会いの場として描写しています。
ウルリヒ・フォン・ザクセン: 「ミンネザング」の中で、菩提樹を恋の苦しみを癒す場所として描写しています。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ: 「ファウスト」の中で、菩提樹をメフィストフェレスとファウストの出会いの場として描写しています。
ハインリヒ・ハイネ: 「新しき歌」の中で、菩提樹を失恋の悲しさを象徴する要素として用いています。
まとめ
リンデンバウムは、その多彩な効能と利用法から、「千の用途を持つ木」としてヨーロッパで広く愛されてきました。その美肌効果やリラックス効果から、現代のスキンケアや美容にも大いに役立っています。
リンデンの持つ豊かな栄養成分は、肌に潤いを与え、ハリと弾力をサポート。また、リラックス効果も高く、心身ともに癒やされる時間を提供してくれます。
ぜひ、リンデンの持つ自然の力をあなたのスキンケアに取り入れてみませんか?日々の生活にリンデンを取り入れることで、より健やかで美しい自分に出会えるかもしれません。
ヨーロッパの自然からの贈り物であるリンデンが、あなたの心身を健やかに、美しく保つ手助けをしてくれることでしょう。