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【日本神話】スサノオと葦 — 嵐の神と葦原に芽吹く生命

【日本神話】スサノオと葦 — 嵐の神と葦原に芽吹く生命 日本神話編

出雲に現れた八頭の大蛇を、嵐の如き剣技で討ち取った須佐之男命(スサノオノミコト)。高天原を追放され、孤独な漂泊の果てに彼が辿り着いたのは、瑞々しく「葦」が茂る地上──葦原中国でした。泥中に根を張り、折れてもなお芽吹く葦の強靭さは、荒ぶる魂を持ちながらも民を慈しむスサノオの情熱と重なります。嵐の神と、風に揺れる生命の象徴。二つの物語が交わる時、不屈の生命力を宿した日本の原風景が浮かび上がります。


この記事でわかること

  • スサノオ(須佐之男命)とはどんな神か──嵐と海と農業の三つの顔
  • 高天原での乱暴と追放──なぜスサノオは地上へ降りたのか
  • 八岐大蛇(ヤマタノオロチ)退治の物語と草薙の剣の誕生
  • 櫛名田比売(クシナダヒメ)との結婚と稲田の女神
  • 葦原中国(あしはらのなかつくに)という名の意味
  • 葦の植物学──水辺に生える強靭な植物の生態
  • 葦と日本文化──古事記から万葉集、建築材料まで
  • スサノオを祀る聖地と葦の風景
  • 稲とスサノオ──農業神としての側面
  • スサノオに関連する植物たち

スサノオ──嵐と海と大地の神

Utagawa Kuniteru, Public Domain, via Wikimedia Commons
Utagawa Kuniteru, Public Domain
via Wikimedia Commons

プロフィール

表記: 須佐之男命、素戔嗚尊、建速須佐之男命

読み: スサノオノミコト

別名

  • タケハヤスサノオノミコト(建速須佐之男命)──「猛く速い」という意味
  • 牛頭天王(ごずてんのう)──神仏習合後の名
  • 祇園社の神

役割・司るもの

  • 嵐・暴風雨
  • 海原(わたつみ)
  • 農業・稲作
  • 疫病除け
  • 英雄神・厄除けの神

シンボルと容姿

スサノオは、荒々しい戦士の姿で描かれる。長い髪を振り乱し、剣を手に、嵐の中に立つ。時には龍を従え、時には稲穂を手にする。

シンボルは剣(特に草薙の剣)、八岐大蛇、葦、稲。出雲の地を代表する神であり、英雄でもあり、農業神でもある。

神々の系譜

父: 伊邪那岐命(イザナギノミコト) 母: 伊邪那美命(イザナミノミコト)──ただし生まれたのは黄泉から帰還後 姉(または妹): 天照大神(アマテラスオオミカミ)──太陽の女神 兄: 月読命(ツクヨミノミコト)──月の神 妻: 櫛名田比売(クシナダヒメ)──稲田の女神 子: 大国主命(オオクニヌシ)の祖先、その他多数

スサノオは、イザナギが黄泉から帰還し、禊(みそぎ)をした際に生まれた。鼻を洗った時に生まれたとされ、三貴子の一柱。しかし、最も荒々しく、最も人間らしい感情を持つ神である。


スサノオの誕生──三貴子の末弟

禊から生まれた神々

黄泉の国から帰還したイザナギは、穢れを清めるため、川で身を清めました。


左目を洗ったとき──天照大神(アマテラス)が生まれました。

右目を洗ったとき──月読命(ツクヨミ)が生まれました。

鼻を洗ったとき──須佐之男命(スサノオ)が生まれました。


三貴子(みはしらのうずのみこ)──最も尊い三柱の神々。


イザナギは、喜びました。

そして、それぞれに役割を与えました。


アマテラスには、高天原(たかまがはら)──天上界を。

ツクヨミには、夜の国を。

スサノオには、海原(うなばら)を。


泣き続ける神

しかし、スサノオは海原を治めませんでした。


ただ、泣き続けました。

激しく、大声で、止まることなく。


「母上に会いたい」


スサノオが泣くと、山は枯れ、海は荒れ、世界中に災いが起こりました。


イザナギは、怒りました。

「お前はなぜ、与えられた国を治めないのか」

「そんなに母に会いたいなら、もう私の子ではない。根の国へ行け!」


スサノオは、追放される前に、姉のアマテラスに別れを告げようと、高天原へ向かいました。


高天原での乱暴──姉との誓約

疑われるスサノオ

スサノオが高天原へ向かうと、

山川が鳴動し、大地が揺れました。


アマテラスは、警戒しました。

「弟が、高天原を奪いに来たのではないか」


アマテラスは、武装して、スサノオを迎えました。


スサノオは、言いました。

「私には悪い心などありません。ただ、姉上に挨拶をしたかっただけです」


アマテラスは、言いました。

「では、その証を立てなさい」


誓約(うけい)──子を産む儀式

二柱の神は、誓約(うけい)を行いました。

お互いの持ち物を交換し、そこから神々を生み出す儀式です。


アマテラスは、スサノオの剣を受け取り、噛み砕いて、息を吹きかけました。

すると、三柱の女神が生まれました。


スサノオは、アマテラスの勾玉を受け取り、噛み砕いて、息を吹きかけました。

すると、五柱の男神が生まれました。


スサノオは、言いました。

「私の心が清ければ、女神が生まれるはずだ。女神が生まれたのだから、私の潔白は証明された!」


(実際には、アマテラスの勾玉から男神が、スサノオの剣から女神が生まれたのですが、

スサノオは自分の勝利と解釈しました)


乱暴の数々

潔白が証明されたと思ったスサノオは、高天原で好き勝手に振る舞いました。


  • 田んぼの畦(あぜ)を壊しました
  • 用水路を埋めました
  • 神殿に糞をまき散らしました

そして──アマテラスが神聖な機織り小屋で織物をしている時、

皮を剥いだ馬を投げ込みました。


驚いた機織り女が、梭(ひ)で体を傷つけて、亡くなってしまいました。


アマテラスは、深く傷つき、天岩戸(あめのいわと)に籠もりました。


世界は、闇に包まれました。


追放──地上への降臨

神々は、スサノオを罰しました。


  • 髭を切られ
  • 爪を剥がされ
  • 大量の贄(にえ)を科され

そして──

高天原から追放されました。


「根の国へ行け」


スサノオは、天から地上へと降りていきました。


葦原中国──スサノオが辿り着いた大地

「葦原中国」という名

スサノオが降り立った地上は、

葦原中国(あしはらのなかつくに)と呼ばれていました。


「葦原」──葦が生い茂る場所。

「中国(なかつくに)」──高天原(天上)と根の国(地下)の中間にある国。


つまり、葦原中国とは、

「葦が生える、中間の国」──

それが、古代日本人が認識していた、この地上世界の名前でした。


なぜ「葦原」なのか

古代の日本列島は、水辺が豊かな土地でした。

川が流れ、湖が広がり、湿地が点在していました。


そして、その水辺すべてに、が生えていました。


葦は、日本の原風景そのものだったのです。


国の始まりを記す古事記の冒頭にも、こう記されています。


「国稚く、浮ける脂の如くして、
海月(くらげ)なす漂へる時、
葦牙(あしかび)の如く萌え騰(あが)る物に因りて成りし神の名は、
国常立神(くにのとこたちのかみ)」


国がまだ若く、油のように浮いていて、クラゲのように漂っていた時、

葦の芽のように萌え上がるものから、最初の神が生まれた。


葦は、日本の始まりを象徴する植物だったのです。


八岐大蛇(ヤマタノオロチ)退治

Toyohara Chikanobu, Public Domain, via Wikimedia Commons
Toyohara Chikanobu, Public Domain
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出雲の国での出会い

スサノオは、出雲の国の肥河(ひのかわ、現在の斐伊川)のほとりに降り立ちました。


すると、川上からが流れてきました。

「川上に、人が住んでいるのだな」


スサノオが川をさかのぼると、

一組の老夫婦と、若い娘が泣いていました。


足名椎(アシナヅチ)──足を撫でる老翁

手名椎(テナヅチ)──手を撫でる老婆

櫛名田比売(クシナダヒメ)──稲田の女神


スサノオは尋ねました。

「なぜ、泣いているのですか」


八岐大蛇の恐怖

アシナヅチが答えました。


「私たちには、八人の娘がいました。

しかし、毎年、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)という怪物がやってきて、

娘を一人ずつ食べていきました。

今年もその時期が来て、最後に残ったこの娘も、食べられてしまいます」


「ヤマタノオロチとは、どんな怪物ですか」


「八つの頭と八つの尾を持つ、巨大な蛇です。

目は真っ赤に輝き、

体には苔や杉や檜が生えています。

体の長さは八つの谷、八つの峰にまたがるほど。

腹はいつも血で爛れています」


スサノオは、言いました。

「私が、その大蛇を退治しましょう。

ただし、娘を私の妻としてください」


アシナヅチは、喜んで承諾しました。


酒と剣の作戦

スサノオは、老夫婦に命じました。


「八つの酒樽を用意しなさい。

そして、強い酒を満たして、待っていなさい」


八岐大蛇が現れました。


八つの頭が、それぞれ酒樽に突っ込み、

酒を飲み干しました。


大蛇は、酔っぱらって、眠ってしまいました。


その時──


スサノオは、十拳剣(とつかのつるぎ)を抜き、

大蛇を斬り刻みました。


八つの頭を斬り、

八つの尾を斬り、

血が肥河を真っ赤に染めました。


草薙の剣の発見

尾を斬っている時、

剣の刃が、何か硬いものに当たりました。


スサノオが尾を裂いてみると、

中から、が出てきました。


立派な剣でした。


スサノオは、この剣を「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」と名付け、

姉アマテラスに献上しました。


この剣は、後にヤマトタケルによって「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」と呼ばれるようになり、

三種の神器の一つとなります。


櫛名田比売との結婚──稲田の女神

奇稲田姫

スサノオは、約束通り、クシナダヒメを妻としました。


櫛名田比売──この名前には、深い意味があります。

「奇稲田姫(くしいなだひめ)」とも書きます。


「奇(くし)」──不思議な、霊妙な

「稲田(いなだ)」──稲を育てる田んぼ

「姫」──貴い女性


つまり、「稲田の霊妙な女神」


スサノオは、出雲の須賀(すが)の地に宮殿を建て、

クシナダヒメと暮らしました。


そして、歌を詠みました。


八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに
八重垣作る その八重垣を

(やくもたつ いずもやえがき つまごみに やえがきつくる そのやえがきを)


「八重の雲が立ち上る出雲の地に、

妻を守るために、八重の垣根を作る。

ああ、この立派な垣根よ」


これが、日本最古の和歌とされています。


農業神としてのスサノオ

クシナダヒメは、稲田の女神です。

そして、スサノオもまた、農業神としての顔を持ちます。


スサノオが高天原で壊した「田んぼの畦」や「用水路」は、

実は農業に関する儀礼だったという解釈もあります。


古代の日本では、田植えの前に、

わざと畦を壊したり、用水路を埋めたりする儀式がありました。

「荒田起こし」と呼ばれる、土地を荒らして清める儀礼です。


スサノオの乱暴は、実は農業儀礼の象徴だったのかもしれません。


また、スサノオは種を地上にもたらした神としても語られます。

『日本書紀』の一書には、

スサノオが体から五穀の種を出し、地上に蒔いたという話があります。


嵐の神が、農業の神でもある。

この矛盾こそが、スサノオの本質です。


嵐は、作物を破壊します。

しかし、嵐の後の雨が、田畑を潤します。


スサノオは、破壊と豊穣、両方を司る神なのです。


葦──水辺に芽吹く生命

Phragmites australis

葦の植物学

葦(アシ)

  • 学名: Phragmites australis
  • 別名: ヨシ(「悪し」を避けて「良し」と呼ぶ)
  • 科名: イネ科
  • 特徴: 多年生草本。湿地、河川、湖沼の水辺に群生する。高さ1〜3メートルに達する。地下茎で繁殖し、群落を形成する。

葦は、イネ科の植物です。

稲と同じ科に属する、水辺の植物。


葦の生態

強靭な生命力

葦は、水辺という過酷な環境で生きます。

洪水が来ても、流されません。

地下茎が深く張っているため、倒れても再び立ち上がります。


冬には地上部が枯れますが、

春になると、泥の中から新しい芽が出てきます。


「芽吹く力」──

これが、葦の最大の特徴です。


風に揺れる姿

葦は、風が吹くと、大きく揺れます。

しかし、折れません。


「柔軟性」──

固くなく、しなやかに曲がることで、風に耐えます。


群生する植物

葦は、一本だけでは生えません。

必ず、群生します。


地下茎で繋がり、広大な葦原を形成します。

その光景は、緑の海のようです。


葦と日本文化

古事記の葦

既に触れましたが、古事記の冒頭、

国の始まりを記す場面に、葦が登場します。


「葦牙(あしかび)の如く萌え騰る物」


葦の新芽が、泥の中から勢いよく伸びる様子。

それが、日本という国の始まりの象徴とされました。


万葉集の葦

万葉集には、葦を詠んだ歌が多数あります。


難波潟 みじかき葦の ふしの間も
逢はでこのよを 過ぐしてよとや

(なにわがた みじかきあしの ふしのまも あわでこのよを すぐしてよとや)


「難波の潟に生える短い葦の、節と節の間のような短い時間も、

あなたに会わずに、この人生を過ごせというのですか」


葦の節の短さを、恋人と会えない時間の短さに喩えた歌です。


葦の実用性

葦は、古代から様々な用途に使われてきました。


  • 屋根材(葦葺き屋根) ──茅葺き屋根の材料として
  • 簾(すだれ) ──編んで日除けに
  • 紙(葦紙) ──葦の繊維から紙を作る
  • 楽器(葦笛) ──笛の材料に
  • 葦原焼き ──春先に葦原を焼き、新芽の成長を促す

葦は、日本人の生活に深く根ざした植物だったのです。


葦原中国の風景──スサノオの大地

出雲の斐伊川

スサノオが降り立った肥河(ひのかわ)は、

現在の島根県を流れる斐伊川(ひいかわ)だとされています。


この川は、たびたび氾濫を起こす、荒々しい川でした。

八岐大蛇の神話は、この川の氾濫を象徴しているという説があります。


八つの頭──八つの支流

腹が血で爛れている──鉄分を含んだ赤い水


つまり、ヤマタノオロチは、暴れ川そのものだったのかもしれません。


そして、スサノオがそれを退治したということは、

治水を成し遂げたことを意味するのかもしれません。


葦原と稲田

葦原と稲田は、実は近い関係にあります。


古代の稲作は、湿田(しつでん)──

水が豊富な湿地で行われました。


葦が生える場所は、水が豊かな場所。

その葦原を切り開いて、稲田にしたのです。


葦原を稲田に変える。

これが、古代日本の農業開拓でした。


スサノオが葦原中国に降り立ち、

稲田の女神クシナダヒメと結婚したことは、

葦原を稲田に変えるという、

農業の始まりを象徴しているのかもしれません。


稲──スサノオと農業

Oryza sativa

五穀の起源

『日本書紀』の一書に、こんな話があります。


スサノオが、食物神大宜都比売(オオゲツヒメ)に食べ物を求めました。

オオゲツヒメは、鼻や口や尻から、様々な食べ物を出して、スサノオに差し出しました。


スサノオは、「汚いものを食べさせようとしている」と怒り、

オオゲツヒメを斬り殺してしまいました。


すると、オオゲツヒメの体から、五穀が生まれました。


  • 頭から──蚕
  • 目から──稲
  • 耳から──粟(あわ)
  • 鼻から──小豆
  • 陰部から──麦
  • 尻から──大豆

神産巣日神(カミムスビ)が、これらを種として取り、

地上に蒔きました。


これが、五穀の起源です。


(注: この話は『古事記』ではスサノオではなく、月読命の話として記されています)


稲の植物学

Oryza sativa

稲(イネ)

  • 学名: Oryza sativa
  • 科名: イネ科
  • 特徴: 一年生草本。水田で栽培される。穂に多数の籾(もみ)をつける。

稲は、葦と同じイネ科です。

つまり、葦と稲は、親戚のような関係。


どちらも水辺を好み、

どちらも地下茎で繁殖し、

どちらも風に揺れます。


葦原を稲田に変えることは、

野生のイネ科植物を、栽培植物に変えることでもありました。


スサノオを祀る聖地

須佐神社(島根県出雲市)

スサノオが最後に鎮まった地とされる、須佐の地。

ここに、須佐神社があります。


「日本一の大社」を自称する、格式高い神社。

本殿は国の重要文化財に指定されています。


境内には、樹齢1300年とも言われる大杉があり、

「須佐の大杉」として親しまれています。


八坂神社(京都府京都市)

京都の祇園に鎮座する、スサノオを祀る神社。

祇園祭で有名です。


スサノオは、神仏習合の時代に牛頭天王(ごずてんのう)と同一視され、

疫病除けの神として崇められました。


祇園祭は、平安時代に疫病が流行した際、

スサノオに祈って鎮めたことが起源とされています。


氷川神社(埼玉県さいたま市)

武蔵国一宮。

スサノオ、クシナダヒメ、そして二柱の子とされる大己貴命(オオナムチ、大国主命)を祀ります。


全国に約280社ある氷川神社の総本社。


スサノオに関連する植物たち

葦──日本の原風景

  • 象徴: 生命の始まり、強靭さ、柔軟性
  • スサノオとの関わり: 葦原中国──スサノオが降り立った大地

稲──豊穣の象徴

  • 象徴: 農業、豊作、生命の糧
  • スサノオとの関わり: 妻クシナダヒメは稲田の女神、五穀の起源

菖蒲(ショウブ)──厄除けの植物

  • 象徴: 邪気払い、勝負
  • スサノオとの関わり: 端午の節句で厄除けに使われる植物。スサノオも疫病除けの神として崇敬される

桃──魔除けの果実

  • 象徴: 邪気退散、長寿
  • スサノオとの関わり: イザナギが黄泉から逃げる際、桃を投げて追手を払った。スサノオの父の物語に登場

まとめ──嵐と大地、破壊と再生

高天原を追われ、地上へと降り立ったスサノオ。

彼が辿り着いたのは、葦が生い茂る、水と緑の大地でした。


葦原中国──

それは、まだ荒々しく、未開の土地。

しかし、生命に満ちた、豊かな場所でもありました。


スサノオは、八岐大蛇を倒しました。

暴れ川を鎮め、人々を救い、英雄となりました。


そして、稲田の女神と結ばれました。

葦原は、稲田に変わりました。

荒々しい大地が、豊穣の地となりました。


これが、スサノオの物語です。


嵐の神でありながら、農業の神。

破壊する者でありながら、守護する者。

追放された神でありながら、英雄として讃えられる。


矛盾に満ちた、最も人間らしい神。


そして、葦もまた、矛盾を体現しています。


折れそうなほど柔らかいのに、折れない。

枯れても、また芽吹く。

泥の中から、清らかに伸びる。


弱さと強さ、死と再生──

両方を併せ持つ植物。


スサノオと葦。

嵐の神と、水辺の植物。



出雲の斐伊川のほとりに、今も葦は生えています。

風が吹けば、緑の波が揺れます。


その音は、まるでスサノオの歌のようです。


八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに
八重垣作る その八重垣を


嵐が去り、葦が揺れ、稲が実る。

スサノオと葦の物語は、今も続いています。


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